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鉛直荷重と局部荷重(木造住宅)シリーズ4

横架材の断面検定★

■横架材の断面検定とは?木造住宅の梁・桁を安全に設計するための基本

木造住宅の構造設計では、柱や耐力壁だけでなく、梁・桁・胴差・母屋・垂木・根太などの「横架材」の安全性を確認することが重要です。

横架材は、屋根や床、人、家具、雪などの重さを受け、その荷重を柱や壁へ伝える役割を持っています。

そのため、横架材の設計では、部材が荷重に対して安全に耐えられるかを確認する必要があります。

この確認作業が、横架材の断面検定です。


■横架材の断面検定で確認する3つのポイント

横架材の断面検定では、主に次の3つを確認します。

・曲げに耐えられるか
・せん断力に耐えられるか
・たわみが許容範囲に収まるか

木造住宅の梁や桁は、上から荷重を受けることで曲がろうとします。

また、支点付近では部材をずらすようなせん断力も発生します。

さらに、部材が壊れないとしても、たわみが大きすぎると、床の使用感や仕上げ材、建具などに影響することがあります。

つまり、横架材の断面検定では、強度の確認と使用性の確認の両方が必要になります。


■横架材にかかる鉛直荷重とは?

横架材の検定では、まず横架材にかかる鉛直荷重を整理します。

鉛直荷重とは、上から下にかかる荷重のことです。
主なものには、次のような荷重があります。

・固定荷重:屋根材、床材、天井材、梁自身の重さなど
・積載荷重:人、家具、設備などの重さ
・積雪荷重:屋根に積もる雪の重さ

特に注意したいのが、積雪荷重の扱いです。

積雪荷重は、地域によって長期荷重として扱う場合と、短期荷重として扱う場合があります。

多雪区域では、雪が長期間建物にかかるものとして考えるため、長期荷重として扱います。

一方、一般地域では、一時的にかかる荷重として短期荷重で扱います。

同じ雪の重さでも、建物が建つ地域によって設計上の考え方が変わる点に注意が必要です。


■横架材はなぜ単純梁として計算するのか?

横架材は、原則として単純梁として計算します。

単純梁とは、両端で支えられた一本の梁として考えるモデルです。

実際の木造住宅では、梁が複数の柱をまたいで連続していることもあります。

その場合、構造的には連続梁として考えることもできます。

しかし、木造住宅の実務では、横架材を単純梁として扱うことが多くあります。

その理由は、単純梁として計算した方が、曲げモーメントやたわみが大きめに出やすく、安全側の検討になりやすいからです。

また、現在の木造住宅ではプレカット加工が一般的です。

設計段階では、実際にどこに継ぎ手が入るか確定していないこともあります。

そのため、連続梁として有利に評価するよりも、単純梁として計算する方が、設計上も実務上も安全で扱いやすいといえます。


■曲げの検定|梁が折れないかを確認する

横架材に荷重がかかると、梁は下にたわもうとします。

このとき部材内部に発生するのが、曲げ応力です。

曲げの検定では、横架材に発生する曲げ応力度が、その木材の許容曲げ応力度以下に収まっているかを確認します。

簡単にいうと、

実際に発生する曲げの力 ≦ 木材が安全に耐えられる曲げの力

になっているかを確認する作業です。

特にスパンが長い梁や、上階の柱・耐力壁を受ける梁では、曲げモーメントが大きくなりやすいため、慎重な検討が必要です。


■せん断の検定|梁がずれるように壊れないかを確認する

横架材では、曲げだけでなくせん断力の確認も必要です。

せん断力とは、部材を上下または左右にずらすように働く力です。

梁の場合、特に支点付近でせん断力が大きくなりやすい傾向があります。

せん断の検定では、横架材に発生するせん断応力度が、木材の許容せん断応力度以下に収まっているかを確認します。

曲げの検定では問題がなくても、せん断で不足する場合もあります。

そのため、横架材の断面検定では、曲げとせん断の両方を確認することが大切です。


■システム係数とは?垂木や根太で使われる考え方

横架材の曲げ検定では、システム係数という考え方があります。

システム係数とは、垂木や根太のように、複数の部材が並列して荷重を分担する場合に、曲げの許容応力度を割り増してよいという考え方です。

たとえば、構造用合板などを張った根太や垂木では、1本の部材だけで荷重を負担するのではなく、複数の部材が一体的に荷重を分担します。

そのため、条件を満たす場合には、曲げの許容応力度であるFbを次のように割り増して扱えます。

材料の種類|Fbの割増
目視等級区分の構造用製材・無等級材|1.25倍
機械等級区分製材|1.15倍

ただし、システム係数はすべての梁や桁に使えるものではありません。

あくまで、荷重を分散して負担する並列材で、構造用合板などによって一体的に働く条件がある場合に使う考え方です。


■横架材のたわみ検定|壊れなくても「使いにくい梁」は避ける

横架材の設計では、強度だけでなくたわみの確認も重要です。

たわみとは、梁が荷重を受けて下にしなる変形のことです。

たとえ曲げやせん断の検定を満足していても、たわみが大きすぎると、次のような問題が起こる可能性があります。

・床がふわふわする
・仕上げ材にひび割れが生じる
・建具の開閉に影響する
・使用時に不安感が出る
・梁上の壁や仕上げに不具合が出る

つまり、横架材の断面検定では、壊れないことだけでなく、快適に使えることも確認する必要があります。


■たわみ計算に使うヤング係数とは?

横架材のたわみを計算するときには、木材のヤング係数を使います。

ヤング係数とは、「材料の変形しにくさ」を表す数値です。

ヤング係数が大きい材料ほど、同じ荷重がかかってもたわみにくくなります。

木材の場合、樹種や等級によってヤング係数が異なります。

また、製材のヤング係数は建築基準法で細かく定められているわけではありません。

そのため、実務では日本建築学会の「木質構造設計規準・同解説」などに示されている値を参考にして、たわみを計算します。

機械等級区分製材では、E70、E90、E110のように、ヤング係数に応じた等級が使われます。


■床梁のたわみ制限は1/250以下

床梁のたわみについては、2000年建設省告示1459号第2により、

スパンの1/250以下

とされています。

たとえば、スパンが4,000mmの床梁であれば、

4,000mm ÷ 250 = 16mm

となるため、たわみは16mm以下に抑える必要があります。

ただし、実務では1/250ではたわみが大きいと感じられる場合もあります。

そのため、多くの基準書では、より厳しい目安として、

1/300以下、かつ2cm以下

を推奨していることがあります。

これは、構造安全性だけでなく、床の使用感や仕上げ材への影響を考慮した実務的な判断です。


■長期たわみでは変形増大係数2.0を考慮する

木材は、荷重が長期間かかり続けると、時間の経過とともに変形が大きくなる性質があります。

これをクリープ変形といいます。

たとえば、重い本を長期間置いた棚板が、だんだん下にたわんでくるようなイメージです。

横架材も同じように、長期荷重を受け続けることで、たわみが徐々に増える可能性があります。

そのため、長期のたわみ計算では、計算で求めたたわみに変形増大係数2.0を乗じて確認します。

つまり、長期的にはたわみが約2倍になる可能性を見込んで、余裕を持って確認するということです。


■梁せいがスパンの1/12を超える場合でも構造計算は重要

2000年建設省告示1459号第1では、

梁せいがスパンの1/12を超える場合には、たわみの確認を省略できる

とされています。

梁せいとは、梁の高さのことです。

一般的に、梁せいが大きいほど、梁はたわみにくくなります。

ただし、実務では、たわみ確認を省略せず、構造計算によって確認することが望ましいです。

特に次のような場合には、梁せいだけで判断するのは危険です。

・スパンが長い梁
・梁上に柱や耐力壁が載る場合
・積雪荷重が大きい地域
・床の使用感を重視する場合
・仕上げ材や建具への影響が懸念される場合

法的に省略できる場合でも、構造計算によって曲げ・せん断・たわみを確認することで、より安全で品質の高い設計につながります。



■横架材の断面検定で重要な実務ポイント

横架材の断面検定では、単に計算式に数値を入れるだけでは不十分です。

実務では、次のような点も意識する必要があります。

●荷重条件を正しく設定する

固定荷重、積載荷重、積雪荷重を正しく整理し、建物の用途や地域条件に合わせて荷重を設定することが重要です。

●単純梁として安全側に検討する

実際には連続梁のように見える場合でも、プレカットや継ぎ手位置の不確定性を考慮し、単純梁として安全側に検討することが基本です。

●曲げ・せん断・たわみをセットで確認する

曲げだけでなく、せん断とたわみも確認することで、構造安全性と使用性の両方を確保できます。

●たわみは実務上の感覚も大切にする

法令上の基準を満たしていても、床の使用感や仕上げへの影響を考えると、より厳しいたわみ制限を採用した方がよい場合があります。


<まとめ>横架材の断面検定は木造住宅の安全性と品質を支える重要な確認

横架材の断面検定は、木造住宅の梁や桁が、荷重に対して安全に働くかを確認するための重要な作業です。

ポイントを整理すると、次のようになります。

・横架材には固定荷重、積載荷重、積雪荷重などの鉛直荷重がかかる
・積雪荷重は多雪区域では長期荷重、一般地域では短期荷重として扱う
・横架材は、原則として単純梁として計算する
・曲げ応力度とせん断応力度が許容応力度以下か確認する
・垂木や根太などの並列材では条件によりシステム係数を使える
・たわみ計算では木材のヤング係数を用いる
・床梁のたわみは1/250以下が基準
・実務では1/300以下、かつ2cm以下を目安にすることも多い
・長期たわみでは変形増大係数2.0を考慮する
・梁せいが十分大きくても構造計算による確認が望ましい

横架材は、建物の荷重を柱や壁へ伝える大切な構造部材です。

そのため、横架材の断面検定では、壊れない強さとたわみすぎない使いやすさの両方を確認することが重要です。


次回は、断面欠損について、お話します。

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