NSJ住宅性能研究所

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鉛直荷重と局部荷重(木造住宅)シリーズ3

梁断面

■梁端部はフル断面ではない|木造住宅の横架材設計で注意すべき4つのポイント

木造住宅の構造計算では、梁のサイズだけを見て「この断面なら安全」と判断することはできません。

実際の梁には、耐力壁が載っていたり、蟻掛けやほぞ穴などの加工があったり、端部の断面が小さくなっていたりします。

そのため、梁が本来持っている断面性能を、そのまま使えないケースがあります。

特に、許容応力度計算では、梁の曲げ・せん断・たわみだけでなく、梁上耐力壁、断面欠損、梁端部の納まり、耐風梁の横曲げなども考慮して検討することが重要です。

この記事では、木造住宅の横架材設計で注意したい「梁端部はフル断面ではない」という考え方について、分かりやすく解説します。


■木造住宅の梁は「見た目の断面」で判断できない

梁は、床や屋根の荷重を受けて柱へ伝える重要な構造部材です。

しかし、実際の木造住宅では、梁にさまざまな加工が入ります。

小梁を受けるための蟻掛け、直上柱を受けるほぞ穴、仕口加工などによって、梁の一部が欠き取られることがあります。

加工があると、梁の有効な断面は小さくなります。

つまり、図面上では十分な梁せいがあるように見えても、実際に力を受けている部分では、フル断面の性能を発揮できない場合があるのです。

そのため、梁の検定では、

「梁の全体寸法」ではなく、「実際に残っている断面」

をもとに安全性を確認する必要があります。


■注意点1:梁上耐力壁がある場合は梁への負担が大きくなる

まず注意したいのが、梁上耐力壁です。

梁上耐力壁とは、梁の上に耐力壁が載っている状態のことです。

特に、耐力壁端部の柱の直下に柱がない場合は、下の梁に大きな負担がかかります。

地震や風を受けると、耐力壁には倒れようとする力、つまり転倒モーメントが発生します。

力が梁に伝わることで、梁には通常よりも大きな曲げモーメントやせん断力が生じます。

そのため、許容応力度計算では、梁上耐力壁の影響を考慮し、梁にかかる力を割り増して検討します。

●梁上耐力壁は床のたわみトラブルにつながりやすい

横架材のトラブルで多いのが、床のたわみです。

特に、スパンの大きい梁の上に耐力壁があり、その直下に柱がない場合は注意が必要です。

梁に大きな力が集中しやすく、結果として床のたわみが大きくなることがあります。

木造住宅の設計では、梁が折れないかどうかだけでなく、生活上問題のないたわみに収まるかも重要な確認ポイントです。


■注意点2:欠き込みによる断面欠損を考慮する

次に重要なのが、断面欠損です。

梁には、施工上必要な加工が入ることがあります。

たとえば、次のような加工です。

・小梁を受けるための蟻掛け
・直上柱を受けるほぞ穴
・梁同士を接合する仕口加工

加工によって梁の一部が削られると、断面性能が低下します。

梁の断面性能には、主に断面係数や断面二次モーメントが関係します。

これらは、梁の曲げ強度やたわみに大きく影響します。

つまり、欠き込みが大きいほど、梁は曲げに弱くなり、たわみやすくなるということです。


●欠き込み後の断面で検定することが重要

構造計算では、欠き込み前のフル断面で検定するのではなく、欠き込み後の実際の断面で確認する必要があります。

たとえば、梁せいが十分に見えていても、仕口加工によって有効断面が大きく減っていれば、曲げやたわみに対して不利になります。

そのため、梁の安全性を確認するときは、

加工後にどれだけ断面が残っているか

を必ず確認することが大切です。


■注意点3:梁端部のせん断検定は実際のかかり部分で見る

梁の端部では、せん断力が大きくなります。

単純梁の場合、せん断力は梁の中央部よりも端部で大きくなります。

そのため、梁端部のせん断検定は非常に重要です。

しかし、木造の梁端部では、蟻掛けなどの仕口加工が使われることが多くあります。

この場合、柱や他の梁にかかっている部分は、梁のフル断面ではありません。

場合によっては、フル断面の半分程度しか残っていないこともあります。

●梁端部は「フル断面ではない」前提で確認する

梁端部のせん断検定では、梁全体の断面で考えるのではなく、実際に支点にかかっている部分の断面で検討します。

ここを見落とすと、梁全体としては問題なさそうに見えても、端部の加工部分でせん断耐力が不足する可能性があります。

特に、梁せいに対して仕口部分の断面が小さい場合は注意が必要です。

梁端部は、構造的に力が大きくなる場所でありながら、加工によって断面が小さくなりやすい場所でもあります。

そのため、木造住宅の横架材設計では、梁端部の納まりを丁寧に確認することが重要です。


■注意点4:吹き抜けまわりの耐風梁は2軸曲げを考慮する

大きな吹き抜けに接する梁では、耐風梁としての検討も必要になります。

通常、梁には床や屋根の重さによる鉛直方向の曲げが生じます。

しかし、大きな吹き抜けまわりでは、強風時に横方向から風圧力を受けることがあります。

この場合、梁には鉛直方向の曲げに加えて、横方向の曲げも生じます。

2方向から曲げを受ける状態を2軸曲げと考えます。

●耐風梁では横方向の力も無視できない

吹き抜けまわりの梁は、通常の床梁とは異なり、風圧力による横方向の力を受ける場合があります。

そのため、鉛直荷重だけを考えて断面を決めると、横方向の曲げに対して十分でない可能性があります。

特に、大きな吹き抜けや大開口がある建物では、耐風梁としての役割を意識し、2軸曲げを考慮した検定を行うことが望ましいです。



■横架材は「たわみ」で断面が決まることが多い

木造住宅の横架材では、曲げやせん断の強度よりも、たわみで断面が決まることが多くあります。

梁が破壊するほどではなくても、床が大きくたわむことで、生活上の不具合や違和感につながるためです。

たとえば、次のような問題が起こる可能性があります。

・床がふわふわする
・建具の建付けに影響が出る
・仕上げ材にひび割れが生じる
・長期的に床の変形が進む

特に、長スパンの梁や、梁上耐力壁が載る梁では、たわみの確認が重要です。

木造住宅の構造設計では、「壊れないこと」だけでなく、「使い続けても支障が出ないこと」まで考える必要があります。


■曲げ・せん断で決まる梁にも注意が必要

横架材はたわみで決まることが多い一方で、曲げやせん断で断面が決まるケースもあります。

たとえば、仕口加工による断面欠損が大きい梁では、曲げで厳しくなることがあります。

また、梁端部のかかり部分が小さい場合は、端部のせん断で決まることもあります。

つまり、梁の検定では、たわみだけを見ればよいわけではありません。

曲げ・せん断・たわみ・断面欠損・端部納まり

これらを総合的に確認する必要があります。


■許容応力度計算で確認できること

許容応力度計算では、梁にかかる力を具体的に算出し、部材の安全性を確認できます。

主に確認する項目は次のとおりです。

・曲げモーメントに対する検定
・せん断力に対する検定
・たわみに対する検定
・梁上耐力壁による力の割増し
・欠き込みによる断面性能の低減
・梁端部の実断面によるせん断確認
・耐風梁の2軸曲げの確認

仕様規定だけでは見落としやすい細かな条件も、許容応力度計算によって確認しやすくなります。

特に、スパンが大きい梁、梁上耐力壁がある梁、吹き抜けまわりの梁、仕口加工が大きい梁では、許容応力度計算による確認が重要です。


<まとめ>梁は「実際に残っている断面」で考える

木造住宅の梁は、図面上の寸法だけで安全性を判断することはできません。

実際には、梁上耐力壁によって力が大きくなったり、仕口加工によって断面が小さくなったりします。

また、梁端部ではせん断力が大きくなるため、フル断面ではなく、実際にかかっている部分の断面で確認する必要があります。

特に重要なのは、次の4つです。

・梁上耐力壁がある場合は、梁への力を割り増して考える
・欠き込みがある場合は、断面性能を低減して検討する
・梁端部のせん断は、実際のかかり部分で確認する
・吹き抜けまわりの耐風梁では、2軸曲げを考慮する

木造住宅の横架材設計では、梁のフル断面ではなく、加工後の実際の断面で安全性を確認することが大切です。

梁は、建物の荷重を柱や基礎へ伝える重要な部材です。

だからこそ、曲げ・せん断・たわみだけでなく、梁上耐力壁、断面欠損、梁端部の納まりまで丁寧に確認する必要があります。


次回は、横架材の断面検定について、お話します。

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