NSJ住宅性能研究所

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各部設計(木造住宅)シリーズ20

土台の曲げ強度

■柱の引抜力と土台の曲げ強度|アンカーボルトまで含めた木造住宅の重要チェックポイント

木造住宅の耐震設計では、耐力壁の強さだけでなく、その力をきちんと基礎まで伝えられるかが重要です。

地震や強風によって建物に水平力が加わると、耐力壁の端にある柱には、上に引き抜かれるような力が生じます。

この力を柱の引抜力といいます。

そして、引抜力は、柱だけで完結するものではありません。

柱 → 柱脚金物 → 土台 → アンカーボルト → 基礎

という流れで伝わっていきます。

そのため、柱の引抜力を検討するときは、柱脚金物だけでなく、土台の曲げ強度・アンカーボルトの引張耐力・座金部分のめり込み耐力まで含めて確認する必要があります。

■柱の引抜力とは?耐力壁の端部に生じる大きな力

地震や台風などで建物に横から力が加わると、耐力壁には大きな水平力が作用します。

このとき、耐力壁の端にある柱、つまり壁端柱には、上に引き抜かれるような力が発生します。

特に、建物の角にある隅柱は注意が必要です。

隅柱は建物の端部に位置しているため、中間にある柱よりも大きな引抜力が生じやすくなります。

木造住宅の耐震性を考えるうえで、柱の引抜力は非常に重要な検討項目です。


■土台の曲げ強度を確認する理由

柱が上に引っ張られると、その力は柱脚金物を通じて土台へ伝わります。

土台は基礎の上に載っており、アンカーボルトによって基礎に固定されています。

柱が引き抜かれようとすると、土台も一緒に持ち上がろうとします。

このとき、アンカーボルトが土台を押さえる支点のように働きます。

結果として、土台にはアンカーボルトを支点とした曲げの力が発生します。

つまり、土台が「てこのように曲げられる」状態です。

隅柱では、アンカーボルトが柱の片側にしか配置されないことが多く、土台にとっては不利な条件になります。

そのため、隅柱まわりでは、土台が曲げ破壊しないかをしっかり確認する必要があります。


■土台の曲げ検定で確認すること

土台の曲げ検定では、柱から生じる引抜力に対して、土台が曲げに耐えられるかを確認します。

ここで重要なのは、検定に使う引抜力の考え方です。

土台の曲げ検定に用いる引抜力は、単なる存在応力ではありません。

耐力壁が許容耐力に達したときに生じる引抜力を使います。

つまり、

「今この瞬間にどれくらい力がかかっているか」

ではなく、

「耐力壁が設計上想定する力を発揮したとき、柱にどれくらいの引抜力が生じるか」

を考えるということです。

この点を間違えると、土台の曲げ強度の評価を誤る可能性があります。


■アンカーボルトの引張耐力も確認する

土台の曲げ強度を確認したら、次に必要になるのが、アンカーボルトの引張耐力の確認です。

柱が上に引き抜かれようとする力は、柱脚金物から土台へ、さらにアンカーボルトを通じて基礎へ伝わります。

つまり、アンカーボルトは、建物が基礎から浮き上がらないように押さえる重要な部材です。

ここで注意したいのは、アンカーボルトの検定に使う「柱からの引抜力」の意味です。

この場合の引抜力は、耐力壁の強さから直接求める引抜力ではなく、柱脚接合部の引張耐力を基準にして考えます。

つまり、

柱脚金物が発揮しうる力を、アンカーボルト側で安全に受け止められるか

を確認するということです。


■アンカーボルトの耐力は3つの破壊パターンで考える

アンカーボルトの安全性は、ボルトそのものの強さだけで判断できません。

アンカーボルトまわりでは、主に次の3つの破壊パターンを考える必要があります。

1. アンカーボルト自体の引張破断

まず確認するのは、アンカーボルトそのものが引張力に耐えられるかです。

大きな引抜力が作用すると、アンカーボルト自体が引っ張られて破断する可能性があります。

そのため、アンカーボルトの断面や材料強度に応じて、十分な引張耐力があるかを確認します。

2. アンカーボルトとコンクリートの付着破壊

次に確認するのは、アンカーボルトが基礎コンクリートから抜けてしまわないかです。

アンカーボルトはコンクリートの中に埋め込まれており、ボルトとコンクリートの付着によって力に抵抗しています。

この付着力が不足すると、アンカーボルト自体は切れなくても、コンクリートから抜けてしまう可能性があります。

つまり、ボルトの強さだけでなく、コンクリートとの一体性も重要になります。

3. 基礎コンクリートのコーン状破壊

さらに、アンカーボルトが引き抜かれることで、基礎コンクリートが円すい状に割れる場合があります。

これをコーン状破壊といいます。

アンカーボルトの周囲のコンクリートが、力に耐えきれず、まとまって抜け出すように破壊するイメージです。

この破壊が起きると、アンカーボルトが残っていても、基礎として力を受け止められなくなります。

そのため、基礎コンクリート側の破壊についても必ず確認する必要があります。


■アンカーボルト引張耐力は「最小値」で判断する

アンカーボルトの引張耐力は、次の3つをそれぞれ確認します。

・アンカーボルト自体の引張耐力
・アンカーボルトとコンクリートの付着耐力
・基礎コンクリートのコーン状破壊に対する耐力

そして、この3つのうち、最も小さい値をアンカーボルトの引張耐力として扱います。

構造は一番弱い部分から壊れるからです。

たとえば、アンカーボルト自体が十分に強くても、コンクリートから抜けてしまえば意味がありません。

逆に、コンクリートが強くても、ボルト自体が切れてしまえば、安全とはいえません。

そのため、アンカーボルトの耐力は、3つの破壊パターンのうち、最も不利な値で判断します。


■土台座金によるめり込み耐力も重要

柱が上に引き抜かれようとすると、土台も一緒に持ち上がろうとします。

土台を上から押さえているのが、アンカーボルトの座金とナットです。

大きな引抜力が作用すると、座金が土台に食い込むようにめり込む可能性があります。

そのため、アンカーボルトの引張耐力だけでなく、座金部分の土台がめり込みに耐えられるかも確認しなければなりません。

この確認を怠ると、アンカーボルト自体は壊れなくても、土台側が損傷し、力を十分に伝えられなくなる可能性があります。


■柱脚接合部の引張耐力を上回るか確認する

アンカーボルトまわりの検定では、主に次の2つを確認します。

1つ目は、アンカーボルトの引張耐力が、柱脚接合部の引張耐力を上回っているか。

2つ目は、土台座金による短期許容めり込み耐力が、柱脚接合部の引張耐力を上回っているか。

つまり、柱脚金物が発揮する力に対して、アンカーボルトと土台がきちんと受け止められるかを確認するということです。

柱脚金物だけを強くしても、それを受ける土台やアンカーボルトが弱ければ、力の流れは途中で途切れてしまいます。


■木造住宅の耐震性は「力の流れ」で考える

木造住宅の耐震設計では、耐力壁の量や壁倍率だけに目が向きがちです。

しかし、本当に重要なのは、地震や風で生じた力を、建物全体でどのように基礎まで伝えるかです。

柱の引抜力は、次のような流れで伝わります。

耐力壁 → 壁端柱 → 柱脚金物 → 土台 → アンカーボルト → 基礎

この流れのどこかに弱点があると、建物全体の耐震性に影響します。

たとえば、耐力壁が強くても、柱脚部や土台、アンカーボルト、基礎がその力を受け止められなければ、設計上の性能を十分に発揮できません。

<まとめ>柱の引抜力は土台・アンカーボルト・基礎まで一体で確認する

柱の引抜力を検討するときは、柱脚金物だけを見るのではなく、土台・アンカーボルト・基礎まで含めて考えることが大切です。

特に重要な確認ポイントは、次のとおりです。

・耐力壁の壁端柱には大きな引抜力が生じる
・隅柱は中柱よりも引抜力が大きくなりやすい
・柱の引抜力によって、土台には曲げの力が生じる
・アンカーボルトを支点として、土台が曲げ破壊しないか確認する
・アンカーボルトは、ボルト自体・付着・コーン状破壊の3つで耐力を確認する
・3つの耐力のうち、最小値をアンカーボルト引張耐力として扱う
・座金部分の土台がめり込みに耐えられるかも確認する
・柱脚接合部の引張耐力を、アンカーボルトと座金が上回る必要がある

木造住宅の安全性は、部材単体の強さだけでは決まりません。

大切なのは、地震力や風圧力によって生じた力を、耐力壁から基礎まで確実に伝えることです。

柱の引抜力、土台の曲げ強度、アンカーボルトの引張耐力、座金のめり込み耐力を一体で確認することが、木造住宅の耐震性を高めるための重要なポイントです。


次回は、アンカーボルトのせん断力について、お話します。

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