NSJ住宅性能研究所

MENU 検索

各部設計(木造住宅)シリーズ19

土台やアンカーボルトに加わる力

■水平荷重時に土台やアンカーボルトに加わる力とは?木造住宅の安全性を支える重要ポイント

木造住宅の耐震性や耐風性を考えるうえで、土台とアンカーボルトの検討はとても重要です。

建物に地震や台風などの水平力が加わると、その力は耐力壁や柱を通じて土台へ伝わり、最終的にはアンカーボルトを介して基礎へ流れていきます。

つまり、土台とアンカーボルトは、建物の上部構造に加わった力を基礎へ伝えるための重要な接続部分です。

ここでは、水平荷重時に土台・アンカーボルトへどのような力が加わるのか、そして設計上どのような確認が必要になるのかを、わかりやすく解説します。

■力は上から下へ伝わる

建物の構造を理解するうえで基本となるのが、「力は上から下へ伝わる」という考え方です。

これは、屋根や床、人、家具などの重さによる鉛直荷重だけでなく、地震や強風によって建物に加わる水平荷重でも同じです。

建物は最終的に基礎を通じて地面に支えられています。

そのため、建物に加わった力は、屋根、床、壁、柱、土台、アンカーボルト、基礎へと順番に伝わっていきます。

力の流れが途中で途切れてしまうと、部材の破損や接合部の損傷につながります。

地震や台風で建物が被害を受ける原因の一つは、力を安全に基礎まで伝えきれないことにあります。


■土台とアンカーボルトの役割

木造住宅において、柱の下に設けられる横材を土台といいます。

土台は、柱や耐力壁から伝わる力を受け取り、それを基礎へ伝える役割を持っています。

そして、その土台を基礎に固定しているのがアンカーボルトです。

アンカーボルトは、土台と基礎をつなぎ止める重要な金物です。

地震や強風時には、建物が横に動こうとしたり、柱が引き抜かれようとしたりするため、アンカーボルトには大きな力が加わります。

そのため、木造住宅の設計では、土台やアンカーボルトが十分な耐力を持っているかを確認する必要があります。


■水平荷重時に土台まわりで確認する3つのポイント

地震や台風などによって水平荷重が加わると、土台まわりでは主に3つの検討が必要になります。

それが、次の3項目です。

・柱の引抜力による土台の曲げ強度の確認
・柱の引抜力に対するアンカーボルトの引張耐力の確認
・水平力に対するアンカーボルトのせん断耐力の確認

それぞれの内容を見ていきます。

1. 柱の引抜力による土台の曲げ強度を確認する

地震や強風によって耐力壁に水平力が加わると、耐力壁の端部にある柱には、上へ引き抜かれるような力が生じます。

この力を柱の引抜力といいます。

柱が上に引っ張られると、その力は柱脚金物などを通じて土台にも伝わります。

結果、土台には曲げの力がかかります。

そのため、土台がこの曲げの力に耐えられるかを確認する必要があります。

特に、柱の引抜力が大きい場合や、土台の断面寸法、材種、アンカーボルトの位置関係によっては、土台の曲げ耐力が重要になります。

ここで確認しているのは、柱が引き抜かれようとしたときに、土台が割れたり曲げ破壊したりしないかという点です。

2. 柱の引抜力に対するアンカーボルトの引張耐力を確認する

柱に生じる引抜力は、最終的にはアンカーボルトを通じて基礎へ伝えられます。

このとき、アンカーボルトには上方向に引っ張られる力、つまり引張力が加わります。

そのため、アンカーボルトが柱の引抜力に対して十分な引張耐力を持っているかを確認する必要があります。

もしアンカーボルトの引張耐力が不足していると、柱脚部や土台まわりの固定が不十分となり、地震時に建物の浮き上がりや接合部の損傷につながるおそれがあります。

簡単にいうと、柱が上に引き抜かれようとする力を、アンカーボルトがしっかり基礎へ伝えられるかを確認する検討です。

3. 水平力に対するアンカーボルトのせん断耐力を確認する

水平荷重が建物に加わると、耐力壁は力に抵抗します。

耐力壁が負担した水平力は、柱や土台を通じてアンカーボルトへ伝わります。

このとき、アンカーボルトには横方向にずれようとする力が加わります。

このような横方向の力をせん断力といいます。

そのため、土台を固定しているアンカーボルトが、耐力壁の耐力に見合うだけのせん断耐力を持っているかを確認する必要があります。

ここで確認しているのは、地震や強風で建物が横に動こうとしたときに、アンカーボルトが土台を基礎にしっかり留めておけるかという点です。

耐力壁が十分に強くても、その力を基礎へ伝えるアンカーボルトのせん断耐力が不足していれば、建物全体として安全とはいえません。


■耐力壁だけでなく「力の伝達経路」が重要

木造住宅の耐震性を考えるとき、耐力壁の量や配置に注目しがちです。

もちろん、耐力壁の性能は重要です。

しかし、それだけでは建物全体の安全性は確保できません。

耐力壁が受けた力を、柱、土台、アンカーボルト、基礎へと確実に伝える必要があります。

つまり、木造住宅の構造設計では、どの部材がどの力を受け、その力をどこへ伝えるのかという力の流れを意識することが大切です。

土台・アンカーボルトの検討は、この力の伝達経路を確認するための重要な作業です。


■土台・アンカーボルトの検討が不足するとどうなるか

土台やアンカーボルトの検討が不足していると、地震や台風時に次のような問題が生じる可能性があります。

・柱脚部が浮き上がる
・土台が曲げによって損傷する
・アンカーボルトが引張力に耐えられない
・アンカーボルトがせん断力に耐えられない
・耐力壁の力を基礎へ十分に伝えられない
・建物全体の耐震性・耐風性が低下する

このように、土台とアンカーボルトは、目立たない部分でありながら、建物の安全性を大きく左右する重要な部位です。


<まとめ>土台とアンカーボルトは水平力を基礎へ伝える重要な接続部

水平荷重時に土台・アンカーボルトに加わる力を理解するうえで大切なのは、建物に加わった力を基礎まで確実に伝えるという考え方です。

地震や強風による水平力は、耐力壁や柱を通じて土台へ伝わり、アンカーボルトを介して基礎へ流れていきます。

そのため、土台まわりでは次の3つを確認する必要があります。

・柱の引抜力による土台の曲げ強度
・柱の引抜力に対するアンカーボルトの引張耐力
・水平力に対するアンカーボルトのせん断耐力

耐力壁の強さだけでなく、土台やアンカーボルトを含めた接合部まで確認することで、建物全体として安全な構造になります。

木造住宅の耐震設計・耐風設計では、「力を受ける部材」だけでなく、「力を伝える部材」まで考えることが非常に重要です。


次回は、土台の曲げ強度について、お話します。

▲このページのTOPへ