NSJ住宅性能研究所

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各部設計(木造住宅)シリーズ18

床継ぎ手の引張力★

■床継ぎ手の引張力は「偶力」で考える|水平構面と横架材接合部の検定ポイント

木造住宅の許容応力度計算では、床構面や横架材接合部に生じる力を確認し、適切な接合部仕様を選定する必要があります。

特に、床構面の外周部にある桁や梁の継ぎ手では、地震力や風圧力によって引張力が生じることがあります。

床継ぎ手の引張力を理解するうえで重要なのが、「偶力」という考え方です。


■床継ぎ手の引張力とは?

床継ぎ手の引張力とは、床構面に水平力が作用したときに、外周部の桁や梁の継ぎ手に生じる引っ張る力のことです。

地震や強風を受けると、床構面にはせん断力や曲げモーメントが発生します。

曲げモーメントに抵抗するため、床構面の一方の外周部には引張力が、反対側には圧縮力が生じます。

つまり、床継ぎ手の引張力は、

床構面に生じる曲げモーメントを、外周部の引張力と圧縮力で受ける

という考え方で求めます。

このように、離れた位置にある引張力と圧縮力の組み合わせでモーメントに抵抗する状態を、偶力といいます。

■床構面に生じるモーメントの求め方

床継ぎ手の引張力を求めるには、まず床構面に生じるモーメントを把握します。

基本的な流れは、「水平構面の検討」と同じです。

まず、床構面に作用する水平力からQ図、つまりせん断力図を作成します。

次に、そのQ図を左端から順に積分していくことで、M図、つまりモーメント図を求めます。

ただし、計算例によっては、M図の右端にモーメントが残ることがあります。

残ったモーメントは、床構面に生じるねじりモーメントに相当します。

そのため、右端に残ったモーメントを打ち消すように、三角形状の補正用モーメントを加えます。

補正後のモーメント図が、最終的に使用するMf図です。


■床継ぎ手の引張力の求め方

床継ぎ手に生じる引張力は、補正後のモーメント図であるMf図を使って求めます。

考え方はシンプルです。

継ぎ手位置におけるMfの値を、建物の奥行き長さで割ることで、床継ぎ手の引張力を算出します。

イメージとしては、

床構面の曲げモーメント ÷ 建物の奥行き長さ = 床継ぎ手の引張力

という関係です。

これは、床構面の片側に引張力、反対側に圧縮力が生じ、その2つの力によってモーメントに抵抗していると考えると理解しやすくなります。


■通し柱に取り付く横架材の引張力

床継ぎ手だけでなく、通し柱に取り付く横架材にも引張力が生じることがあります。

たとえば、建物の端部に通し柱があり、その通し柱に横架材が取り付いていて、さらにその下に筋かいが入っている場合です。

このような場合、筋かいの力によって、横架材端部が引っ張られることがあります。

基本的には、筋かいの水平成分、つまり筋かい耐力壁の許容せん断耐力と同じ大きさの力が、横架材端部に作用すると考えます。

筋かいの上端は横架材を押し付ける方向にも働きます。

そのため、横架材との間に摩擦抵抗が生じます。

したがって、横架材端部の引張力は、

筋かいによる水平力 − 押し付けによって生じる摩擦抵抗

という考え方で整理できます。


■横架材接合部では複合応力の検定が必要になる

横架材接合部の設計では、引張力だけを確認すればよいとは限りません。

実際の接合部には、引張力と同時にせん断力が作用することがあります。

このように、複数の力が同時に作用する状態を、複合応力といいます。

たとえば、横架材端部に引張力が生じつつ、接合部にはせん断力も加わるような場合です。

このときは、

・せん断力に対する検定比
・引張力に対する検定比

を組み合わせて、接合部の安全性を確認します。

検定比とは、簡単に言えば、

実際にかかる力が、接合部の耐力に対してどの程度の割合なのか

を表す数値です。

検定比が1.0を超えると、接合部にかかる力が耐力を上回る可能性があるため、安全とは判断できません。

そのため、引張力とせん断力を組み合わせた状態でも、検定結果が基準内に収まる接合部を選定することが重要です。


■靭性が高い接合部では検定の考え方が変わる

複合応力の検定では、接合部の靭性も重要です。

靭性とは、簡単に言うと、急に壊れず、変形しながら粘り強く力に抵抗する性質のことです。

靭性が高い接合部では、引張力とせん断力が同時に作用した場合でも、ある程度粘り強く抵抗できると考えられます。

そのため、複合応力の検定式では、靭性が高い接合部について、より実態に合った評価ができるように扱われています。

この考え方は、柱脚接合部の複合応力検定と同様です。


■筋かい上部に生じる「逆せん断力」とは?

筋かいが横架材に取り付く部分では、もうひとつ注意すべき力があります。

それが、逆せん断力です。

筋かいの上部では、横架材を上に突き上げるような力が働くことがあります。

通常、梁や桁などの横架材には、上から床・壁・屋根などの鉛直荷重がかかっています。

そのため、多くの場合、筋かいによる上向きの力よりも、上から押さえつける力の方が大きくなります。

この場合、逆せん断力は大きな問題になりにくいです。

しかし、上階に壁線がない場合や、上からかかる鉛直荷重が小さい場合には注意が必要です。

筋かいによる上向きの力が、鉛直荷重を上回る可能性があるからです。

このように、通常想定するせん断力とは逆向きに作用する力を、逆せん断力といいます。


■逆せん断力が生じる場合の金物選定

逆せん断力が生じる場合には、その力に対応できる接合金物を選ぶ必要があります。

ここで重要なのは、単に引張耐力が大きい金物を選べばよいわけではないという点です。

逆せん断に対して使用する場合は、逆せん断の耐力が明示されている金物の中から、必要な性能を満たすものを選定する必要があります。

特に、上階に壁線がなく、鉛直荷重が小さい部分では、横架材端部の力の流れを丁寧に確認することが重要です。


■横架材接合部の設計で重要なポイント

横架材接合部の設計では、ひとつの力だけを見て判断するのではなく、接合部にどのような力が同時に作用するのかを確認する必要があります。

特に重要なのは、次の3つです。

1つ目は、床構面の曲げモーメントによって生じる床継ぎ手の引張力です。

これは、偶力の考え方で整理します。

2つ目は、筋かいの水平成分によって生じる横架材端部の引張力です。

筋かい耐力壁の許容せん断耐力と、摩擦抵抗を考慮して検討します。

3つ目は、筋かい上部で生じる可能性のある逆せん断力です。

特に、上階に壁線がない部分や鉛直荷重が小さい部分では注意が必要です。


<まとめ>床継ぎ手と横架材接合部は「力の流れ」で理解する

床継ぎ手や横架材接合部の検討では、部材に生じる力を単独で見るのではなく、建物全体の力の流れとして理解することが大切です。

床継ぎ手の引張力は、床構面に生じるモーメントを、外周部の引張力と反対側の圧縮力による偶力として考えます。

また、通し柱に取り付く横架材では、筋かいの水平成分によって端部に引張力が生じる場合があります。

さらに、横架材接合部では、引張力とせん断力が同時に作用する複合応力の検定が必要になることもあります。

加えて、筋かい上部では、横架材を上に突き上げる逆せん断力にも注意が必要です。

つまり、横架材接合部の設計では、

・引張力
・せん断力
・逆せん断力

を、力の流れとして一体的に確認することが重要です。

木造住宅の構造設計では、計算式そのものを覚えるだけでなく、なぜその力が発生するのか、どの部材を通って力が伝わるのかを理解することが、安全な設計につながります。


次回は、土台やアンカーボルトに加わる力について、お話します。

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