NSJ住宅性能研究所

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各部設計(木造住宅)シリーズ9

床に加わる力

■地震や強風のとき、床にはどんな力がかかる?
木造住宅の水平構面をわかりやすく解説

木造住宅の構造を考えるとき、つい「耐力壁」ばかりに目が向きがちです。

しかし、地震や強風の力を建物全体で受け止めるためには、床の役割も非常に重要です。

床は、単に人や家具を支えるだけの部材ではありません。

地震や風によって建物に加わった横からの力を、耐力壁へ伝える通り道として働いています。

この記事では、地震や強風時に床へどのような力が加わるのかを、理解しやすいように、できるだけかみ砕いて解説します。


■床は「力を伝える部材」である

地震や強風が建物に加わると、その力は外壁や耐力壁に作用します。

その力は壁だけで完結するわけではありません。

たとえば、風が外壁に当たると、その力は壁を構成する柱や間柱を通じて、上下の床へ伝わります。

2階の耐力壁が受けた水平力は、床面を通して1階の耐力壁へ流れていきます。

つまり床は、建物の中で横方向の力を運ぶ重要な構造部材なのです。


■水平構面は「梁」として考えると理解しやすい

床にどのような力が生じるかを理解するには、構造力学で学ぶ梁(はり)のイメージを使うと分かりやすくなります。

床全体を、両端の耐力壁に支えられた1本の梁に置き換えて考えるのです。

このとき、床に加わる水平力は、梁にかかる荷重として考えることができます。

梁に荷重がかかると、主に次の2つの力が生じます。

●曲げモーメント

梁をたわませようとする力です。

一般的には中央付近で大きくなります。

●せん断力

梁を途中でずらすように働く力です。

一般的には支点付近、つまり耐力壁の近くで大きくなります。

床も同じように考えることができ、床の中央では曲げの影響が大きく、端部ではせん断の影響が大きくなると理解できます。



■地震力が床に等分布荷重として作用する理由

地震力は、基本的に重さ × 加速度で考えることができます。

床を揺れの方向に細長い短冊状に分けて考えると、それぞれの部分には、その部分の重さに応じた地震力が生じます。

もし床の上の重さがおおむね均等で、加速度も床面全体でほぼ同じと考えられるなら、各部分に生じる地震力もほぼ均等になります。

そのため、床に加わる地震力は、構造力学上は等分布荷重として扱うことができます。



■風圧力も等分布荷重として考えられる

風圧力も、考え方の基本は同じです。

風の力は、

見付け面積 × 単位面積あたりの風圧力

によって求められます。

外壁面を短冊状に分けて考えたとき、各部分にかかる風圧力がほぼ一定であれば、その力も均等に分布した荷重として扱うことができます。

つまり、風圧力も床に対して等分布荷重として置き換えて考えやすいのです。


■上階の耐力壁があると床には集中荷重も加わる

床に加わる力は、等分布荷重だけではありません。

上の階に耐力壁がある場合、その壁が受けた水平力は、床のある位置に集中的に流れ込んできます。

このような力は、構造力学では集中荷重として扱います。

つまり床には、

・床全体に広がってかかる等分布荷重
・上階の耐力壁から特定の位置に加わる集中荷重

の両方が作用することがあります。

2つが重なると、床の端部などには大きなせん断力が発生しやすくなります。

そのため、水平構面の設計では、床倍率だけでなく、力の流れ方そのものを意識することが大切です。


■なぜ上下階で耐力壁をそろえることが重要なのか

上階の耐力壁の真下に、1階の耐力壁があれば、力は床を大きく横移動せず、そのまま下に伝わりやすくなります。

上階の耐力壁の下に1階の耐力壁がない場合、力はいったん床が受けて、横方向に運ばなければなりません。

すると床に余計な負担がかかり、水平構面の検討が厳しくなることがあります。

このため、耐力壁は上下階でなるべくそろえることが重要です。

これは構造計画の基本ですが、特に大きな吹き抜けや壁位置のずれが大きい建物では、より強く意識すべきポイントです。


■木造住宅で水平構面の検討が重要になる場面

水平構面の検討が特に重要になるのは、次のようなケースです。

●大きな吹き抜けがある場合

床が連続しておらず、力の流れが複雑になりやすいためです。

●上下階で耐力壁の位置がずれている場合

上階の力を床で横に運ぶ必要があり、床の負担が大きくなります。

●耐力壁の量が多く、建物の剛性が高い場合

建物がしっかりしている分、床や接合部に求められる役割も大きくなることがあります。

●形状が不整形な場合

L字型やコの字型など、平面形状が単純でない建物では、床の中で力が単純に流れないことがあります。


<まとめ>床は「人が乗る場所」ではなく「力を運ぶ部材」

木造住宅の床は、単に人や家具を支えるだけの部材ではありません。

地震や強風による水平力を、建物の中で適切に伝えるための重要な構造部材です。

床を梁のように考えると、

・全体に広がる力は等分布荷重
・上階の耐力壁から伝わる力は集中荷重

として整理できます。

そして、これらの力によって床には曲げモーメントやせん断力が生じます。

特に、上下階で耐力壁の位置がそろっていない場合には、床が力を大きく負担することになるため注意が必要です。

水平構面を正しく理解することは、耐力壁の配置や吹き抜けの扱い、さらには安全な木造住宅の設計につながります。

壁だけでなく、床まで含めて力の流れを考えることが、構造設計ではとても大切です。


次回は、せん断力の負担について、お話します。

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