NSJ住宅性能研究所

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各部設計(木造住宅)シリーズ1

接合部

■耐力壁に負けない接合部を選ぶとは?木造住宅の耐震設計で重要な考え方をわかりやすく解説

木造住宅の耐震設計では、耐力壁をしっかり入れることが重要だとよくいわれます。

しかし、実際には耐力壁だけでは十分ではありません。

耐力壁の力をきちんと受け止める接合部の設計も同じくらい重要です。

この記事では、耐力壁に負けない接合部を選ぶ理由や、接合金物が義務化された背景、既存住宅で注意したいポイントまで、わかりやすく解説します。



■耐力壁に負けない接合部とは?

耐力壁に負けない接合部とは、耐力壁が地震時に発揮する力より先に、柱頭や柱脚の接合部が壊れないように設計された接合部のことです。

木造住宅では、地震の力を耐力壁が受け持ちます。

ただし、その力は壁の中だけで完結するわけではなく、壁端の柱を通じて柱頭・柱脚の接合部へ伝わります。

そのため、耐力壁がどれだけ強くても、接合部が弱ければ、そこが先に破壊してしまいます。

壁の強さに見合った接合金物を選ぶことが、耐震設計の基本になります。


■なぜ接合部の設計が重要なのか

接合部の設計が重要な理由は、建物の耐震性能が接合部の強さに左右されるからです。

たとえば、耐力壁が十分に配置されていても、柱脚や柱頭の金物が弱いと、地震時に接合部が先に破壊されるおそれがあります。

この場合、耐力壁は本来の性能を発揮できません。

強い壁を入れるだけで安心するのではなく、その壁の力を安全に基礎や横架材へ伝えられるかまで確認する必要があります。


■接合金物が義務化された背景

木造住宅の接合部に金物を設置することが法的に重視されるようになった背景には、1995年の阪神・淡路大震災があります。

この地震では、多くの木造住宅が倒壊し、原因のひとつとして、柱脚などの接合部の不備が指摘されました。

阪神・淡路大震災の被害を踏まえて、2000年の建築基準法施行令の改正により、耐力壁端部柱の柱頭・柱脚などへの接合金物の設置が義務化されました。

これにより、木造住宅では「壁量を満たす」だけでなく、接合部の安全性を確保する設計が求められるようになりました。



■接合部にかかる力は正確に求める必要がある

接合金物は、ただ強そうなものを選べばよいわけではありません。

大切なのは、その接合部に実際どれだけの力がかかるのかを把握し、それに応じた金物を選ぶことです。

接合部にかかる力を適切に見積もれないと、必要な耐力を満たさない金物を選んでしまう可能性があります。

その結果、地震時に接合部が先に壊れ、建物の耐震性能が低下してしまいます。


■熊本地震でも確認された接合部被害

2016年の熊本地震では、戸建て住宅の出隅部の柱が引き抜けるような被害も見られました。

これは、地震の力に対して接合部の性能が十分でなかった例のひとつといえます。

このような被害事例は、接合部の設計が不十分だと、耐力壁があっても安心できないことを示しています。


■既存住宅で特に注意したいポイント

既存の木造住宅には、現在の基準ほど十分な接合金物が使われていないものも多くあります。

そのため、耐震診断や耐震補強では、耐力壁の量や配置だけでなく、柱頭・柱脚の接合部が適切かどうかを確認することが大切です。

特に古い住宅では、接合部の補強が耐震改修の大きなポイントになることがあります。


<まとめ>木造住宅の耐震性は接合部まで見て判断する

木造住宅の耐震設計では、耐力壁だけを見ても不十分です。

本当に重要なのは、耐力壁が発揮する力を、柱や接合部がきちんと受け止められることです。

耐力壁が強くても、接合部が先に壊れてしまえば、その性能は活かせません。

だからこそ、木造住宅の設計や耐震診断では、耐力壁に負けない接合部を選ぶことが重要なのです。


次回は、3つの接合部について、お話します。

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