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■梁上耐力壁のせん断耐力と剛性とは? 木造住宅では、本来、耐力壁の下には柱や壁があって、その力をまっすぐ下へ流せるのが理想です。 しかし実際には、2階や3階の耐力壁が、柱の上ではなく「梁の上」に載っていることがあります。 これを梁上耐力壁といいます。 このような耐力壁は、下にある梁がたわむため、普通の耐力壁と同じようには働きません。 つまり、壁そのものが弱いわけではなくても、梁が曲がることで、壁全体としての強さ(せん断耐力)や硬さ(剛性)が下がって見えるのです。
■グレー本で扱える梁上耐力壁の範囲 グレー本に準拠した設計では、3次梁以上に載る耐力壁は対象外です。 つまり、梁の上にさらに梁が載って、その上にまた耐力壁があるような、複雑な力の伝わり方をするものは、原則として扱わない考え方です。 グレー本で扱える梁上耐力壁の形は、主に次の3つです。 ① 耐力壁の端部の下に柱がない場合 耐力壁の左右どちらか、または両方の下階に柱がないケースです。 この場合、壁の力を下に伝える途中で梁がたわむため、壁の性能をそのまま使うことはできません。 ② 耐力壁がオーバーハング先端の横架材に載っている場合 外壁や上階が下階より張り出していて、その先端の梁の上に耐力壁があるケースです。 先端部分は支えが不利なので、変形しやすくなります。 ③ 耐力壁が跳ね出し梁の片持ち部分にある場合 いわゆる片持ち梁の上に耐力壁があるケースです。 片持ち部分は特にたわみやすいため、壁の剛性低下を無視できません。 ■なぜ剛性低減が必要なのか 耐力壁は、地震や風の力を受けたときに、建物の変形を抑える役割があります。 しかし、その壁が梁の上に載っていると、壁が変形する前に、まず梁がしなってしまいます。 その結果、 ・壁が本来より柔らかく見える ・建物全体の変形が大きくなる ・偏心や変形の計算に影響する という問題が出てきます。 そのため、梁上耐力壁は、剛性を低減して評価する必要があります。 ■剛性低減係数の考え方 グレー本では、2次梁までであれば、剛性低減係数を式で求めることができます。 式では、主に次の2つを考えています。 1. 梁そのものがたわむこと 耐力壁の下にある梁は、水平力の影響で曲げ変形します。 このたわみが大きいほど、壁は硬く働けません。 2. 梁を支える支点も下がること 梁の両端が完全に固定されているとは限らず、支えている部分も少したわむことがあります。 つまり、梁だけでなく、その支点側の沈み込みも含めて考える必要があります。 つまり、「梁がどのくらいたわむか」と「その両端がどのくらい下がるか」を合わせて、壁の剛性低下を評価している、ということです。 ■注意点 ここで特に大事なのは、これらの式が直下の梁の影響だけを考えているという点です。 たとえば、3階の梁上耐力壁に力がかかったときに、その影響でさらに2階の床梁まで大きく曲がるような構造は、この式の想定外です。 つまり、もっと複雑に梁が何段も影響し合う架構までは、この簡易的な扱いではカバーしていません。 そのため、3次梁以上は禁止とされているわけです。 ■せん断耐力も下げた方がよい理由 この式はもともと剛性を低減するための式です。 実務では剛性だけでなく、許容せん断耐力も低減するのが一般的です。 なぜかというと、梁が大きくたわむような状態では、壁が本来想定していた通りに力を負担しにくくなるからです。 計算上の「硬さ」だけ下げて、「強さ」はそのままにしてしまうと、少し安全側とは言いにくい場面があります。 そのため、梁上耐力壁では、 ・剛性を低減する ・必要に応じて耐力も低減する という慎重な扱いが求められます。 <まとめ> 梁上耐力壁とは、柱の上ではなく梁の上に載った耐力壁のことです。 地震や風の力を受けると、壁より先に梁がたわんでしまうため、壁の強さや硬さをそのまま使ってはいけません。 グレー本では2次梁までについて、梁のたわみや支点の沈み込みを考慮して、剛性を割り引いて評価する方法が示されています。 実務では安全のため、せん断耐力もあわせて低減することが多いです。
次回は、偏心建物とねじれについて、お話します。
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