NSJ住宅性能研究所

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鉛直構面(木造住宅)シリーズ14

せん断耐力と剛性★

■梁上耐力壁のせん断耐力と剛性とは?

木造住宅では、本来、耐力壁の下には柱や壁があって、その力をまっすぐ下へ流せるのが理想です。

しかし実際には、2階や3階の耐力壁が、柱の上ではなく「梁の上」に載っていることがあります。

これを梁上耐力壁といいます。

このような耐力壁は、下にある梁がたわむため、普通の耐力壁と同じようには働きません。

つまり、壁そのものが弱いわけではなくても、梁が曲がることで、壁全体としての強さ(せん断耐力)や硬さ(剛性)が下がって見えるのです。



■グレー本で扱える梁上耐力壁の範囲

グレー本に準拠した設計では、3次梁以上に載る耐力壁は対象外です。

つまり、梁の上にさらに梁が載って、その上にまた耐力壁があるような、複雑な力の伝わり方をするものは、原則として扱わない考え方です。

グレー本で扱える梁上耐力壁の形は、主に次の3つです。

① 耐力壁の端部の下に柱がない場合

耐力壁の左右どちらか、または両方の下階に柱がないケースです。

この場合、壁の力を下に伝える途中で梁がたわむため、壁の性能をそのまま使うことはできません。

② 耐力壁がオーバーハング先端の横架材に載っている場合

外壁や上階が下階より張り出していて、その先端の梁の上に耐力壁があるケースです。

先端部分は支えが不利なので、変形しやすくなります。

③ 耐力壁が跳ね出し梁の片持ち部分にある場合

いわゆる片持ち梁の上に耐力壁があるケースです。
片持ち部分は特にたわみやすいため、壁の剛性低下を無視できません。


■なぜ剛性低減が必要なのか

耐力壁は、地震や風の力を受けたときに、建物の変形を抑える役割があります。

しかし、その壁が梁の上に載っていると、壁が変形する前に、まず梁がしなってしまいます。

その結果、

・壁が本来より柔らかく見える
・建物全体の変形が大きくなる
・偏心や変形の計算に影響する

という問題が出てきます。

そのため、梁上耐力壁は、剛性を低減して評価する必要があります。


■剛性低減係数の考え方

グレー本では、2次梁までであれば、剛性低減係数を式で求めることができます。

式では、主に次の2つを考えています。

1. 梁そのものがたわむこと

耐力壁の下にある梁は、水平力の影響で曲げ変形します。

このたわみが大きいほど、壁は硬く働けません。

2. 梁を支える支点も下がること

梁の両端が完全に固定されているとは限らず、支えている部分も少したわむことがあります。

つまり、梁だけでなく、その支点側の沈み込みも含めて考える必要があります。

つまり、「梁がどのくらいたわむか」と「その両端がどのくらい下がるか」を合わせて、壁の剛性低下を評価している、ということです。


■注意点

ここで特に大事なのは、これらの式が直下の梁の影響だけを考えているという点です。

たとえば、3階の梁上耐力壁に力がかかったときに、その影響でさらに2階の床梁まで大きく曲がるような構造は、この式の想定外です。

つまり、もっと複雑に梁が何段も影響し合う架構までは、この簡易的な扱いではカバーしていません。

そのため、3次梁以上は禁止とされているわけです。


■せん断耐力も下げた方がよい理由

この式はもともと剛性を低減するための式です。

実務では剛性だけでなく、許容せん断耐力も低減するのが一般的です。

なぜかというと、梁が大きくたわむような状態では、壁が本来想定していた通りに力を負担しにくくなるからです。

計算上の「硬さ」だけ下げて、「強さ」はそのままにしてしまうと、少し安全側とは言いにくい場面があります。

そのため、梁上耐力壁では、

・剛性を低減する
・必要に応じて耐力も低減する

という慎重な扱いが求められます。


<まとめ>

梁上耐力壁とは、柱の上ではなく梁の上に載った耐力壁のことです。

地震や風の力を受けると、壁より先に梁がたわんでしまうため、壁の強さや硬さをそのまま使ってはいけません。

グレー本では2次梁までについて、梁のたわみや支点の沈み込みを考慮して、剛性を割り引いて評価する方法が示されています。

実務では安全のため、せん断耐力もあわせて低減することが多いです。



次回は、偏心建物とねじれについて、お話します。

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