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■耐力壁の「剛性」とは何か 耐力壁を考えるとき、多くの人はまず、どれくらい強い壁なのかに注目します。 もちろんそれは大切ですが、実はそれだけでは不十分です。 耐力壁には、「許容せん断耐力」だけでなく、「せん断剛性」も必要です。 「剛性」とは、簡単にいえば、壁の変形しにくさのことです。 地震や風の力が建物に加わると、壁には横から力がかかり、少し変形します。 そのとき、同じ力を受けても変形が小さい壁ほど、剛性が高いといえます。 反対に、変形しやすい壁は剛性が低い壁です。
■なぜ剛性が必要なのか 木造住宅の構造計算では、壁がどれだけ強いかだけでなく、どのくらい変形するかも重要になります。 たとえば、 ・偏心率の計算 ・ルート2で必要になる層間変形角の算定 では、壁の剛性が必要になります。 つまり、建物の安全性を考えるには、 ・「壊れにくさ」だけでなく、 ・「揺れたときにどれだけ変形しにくいか」 も見なければならない、ということです。 ■一般的な耐力壁の剛性の考え方 耐力壁にはいくつか種類がありますが、一般的な筋かい壁や面材耐力壁では、剛性の求め方に共通した考え方があります。 これらの壁は、許容せん断耐力の水平力が加わったときに、壁が1/150ラジアン変形するものとして扱います。 少し難しく聞こえるかもしれませんが、要約すると、 「このくらいの力がかかると、一般的な耐力壁はこのくらい変形する」 という基準を決めて、その基準から剛性を求めているわけです。 この考え方は、筋かいや面材耐力壁のような、現在よく使われる壁に共通する基本ルールです。 ■土壁などの伝統的な壁は少し扱いが違う 一方で、土壁などの伝統的な耐力壁は、一般的な筋かいや面材の壁に比べて、やや変形しやすい性質があります。 そのため、これらの壁は、1/120ラジアン変形するときを基準にして剛性を考えます。 つまり、土壁は「弱い壁」という意味ではなく、現代的な面材壁などとは変形の仕方が少し違う壁として扱われているのです。 ■耐力壁の種類によって剛性の求め方は異なる 耐力壁の剛性は、すべて同じ方法で決まるわけではありません。 ① 一般的な耐力壁・②準耐力壁など 一定の変形角を前提にして剛性を求めます。 一般的な壁は1/150ラジアン、土壁などは1/120ラジアンを使う、という考え方です。 ③ 計算によって性能を求める壁 このタイプは、計算式の中で耐力とあわせて剛性も求める形になります。 そのため、別に簡単な基準を当てはめるというより、計算の結果として剛性が出てきます。 ④ 実験で性能を確認する壁 このタイプは、実際の試験結果から壁の性能を決めます。 壁のせん断耐力を求める手続きの中で、せん断剛性も一緒に算出され、その値を性能評価機関が認定します。 <まとめ> 耐力壁を考えるときは、強さだけを見ればよいわけではありません。 大切なのは、次の2つをセットで見ることです。 ・許容せん断耐力 = どれだけの力に耐えられるか ・せん断剛性 = どれだけ変形しにくいか 建物は、強ければそれで安心というわけではありません。 どの壁がどれだけ変形し、建物全体がどう揺れるかまで考えて、はじめて安全性を適切に判断できます。 だからこそ、耐力壁の設計では、「強さ」と「剛さ」の両方が大切になるのです。
次回は、高倍率耐力壁について、お話します。
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