NSJ住宅性能研究所

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施行令46条(木造住宅)シリーズ23

壁量設計と耐力

■壁量設計だけでは耐震性能が足りないこともある

木造住宅の耐震性を考えるとき、壁の量をどれだけ入れるかはとても重要です。

ただし、ここで注意したいのは、どの基準で壁量を決めるかによって、求められる耐震性能に差が出るという点です。

木造住宅の設計には、いくつかの考え方があります。

代表的なのが、

・建築基準法にもとづく「壁量設計」
・住宅性能表示制度での「壁量」
・「許容応力度計算」

です。



■建築基準法の壁量はあくまで最低基準

まず、一般的な「壁量設計」は、建築基準法施行令46条4項にもとづく設計方法です。

壁ごとに決められた「壁倍率」を使って、建物に必要な耐力壁の量を計算します。

この方法は、木造住宅の基本的な設計ルールとして広く使われています。

ただし、ここで押さえておきたいのは、この壁量、安全の目安というより、最低限満たすべき基準だということです。

建築基準法の壁量を満たしていれば、法的には基準をクリアしていることになります。

しかし、それだけで、十分に余裕のある耐震性能が確保されているとまでは言い切れないのです。


■住宅性能表示制度では、より高い性能を求める

次に、住宅性能表示制度です。

これは品確法にもとづく制度で、住宅の耐震性能を耐震等級1・2・3で評価します。

一般的には、

・耐震等級1:建築基準法レベル
・耐震等級2:等級1の1.25倍程度
・耐震等級3:等級1の1.5倍程度

の耐震性能を目安としています。

ここで重要なのは、性能表示制度では、建築基準法よりもより安全側に見た壁量が求められることが多いという点です。

そのため、同じ木造住宅でも、壁量設計だけで求めた壁量と、性能表示で求めた壁量とでは差が出ます。


■許容応力度計算は建物の実態により近い

3つ目が「許容応力度計算」です。

これは、建物の重さや形、荷重のかかり方などを、より実際に近い形で計算していく方法です。

壁量設計のように単純なルールだけで決めるのではなく、建物が実際にどれくらい重く、どれくらいの地震力を受けるのかを踏まえて検討するため、より精密な設計方法といえます。

そのため、建物の安全性をしっかり確認したい場合には、壁量設計だけでなく、こうした構造計算の考え方がとても大切になります。


■性能表示と比べると壁量設計は少なめになる

性能表示制度では、耐震等級2や等級3の必要壁量は示されていますが、耐震等級1の壁量は直接は書かれていません。

そこで、耐震等級2の壁量を1.25で割り戻すことで、「耐震等級1相当」の壁量を求めることができます。

「耐震等級1相当」と、建築基準法の壁量設計で求めた壁量を比べると、建築基準法の壁量はかなり少ないことが分かります。

言い換えると、建築基準法の壁量設計は、性能表示の考え方から見ると、必要な壁量の7〜8割程度、つまりおおむね4分の3くらいしかないケースがあるということです。


■なぜ差が出るのか

差が出る理由のひとつは、建物の重さの見方が違うことです。

建築基準法の壁量設計では、建物の重さをある程度単純化して扱います。

一方、性能表示制度や許容応力度計算では、屋根や外壁、仕上げ材なども含めて、より実際に近い重さを考慮します。

建物が重くなれば、地震時に受ける力も大きくなります。

その結果として、必要な壁量も増えるのです。


■壁量設計だけで安心とは言えない

このように見ていくと、壁量設計は木造住宅の基本ではあるものの、
それだけで十分な耐震性を判断するのは危険な場合があることが分かります。

特に、重い屋根を使う住宅や、吹抜けがある住宅、壁の配置バランスに偏りがある住宅などでは、単純な壁量だけでは安全性を十分に評価できないことがあります。

だからこそ、これからの木造住宅では、建築基準法を満たしているから大丈夫と考えるのではなく、性能表示や許容応力度計算も踏まえて、より実態に合った耐震性能を確認することが大切です。


<まとめ>

木造住宅の壁量には、建築基準法、性能表示制度、許容応力度計算という複数の考え方があります。

その中で、建築基準法にもとづく壁量設計は、あくまで最低基準です。

性能表示の考え方と比べると、建築基準法の壁量は少なめになることがあり、場合によっては耐震性能に余裕がない住宅になってしまうこともあります。

木造住宅の安全性を本当に高めたいのであれば、単に、壁量を満たしているかだけでなく、その壁量が建物の重さや形に対して本当に十分かどうかまで見ていくことが大切です。



次回は、建築基準法の必要壁量について、お話します。

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