NSJ住宅性能研究所

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荷重と外力(木造住宅)シリーズ7

地震力と建物重量

地震力を考えるときに、まず大事なポイントは 2つ あります。

■許容応力度計算で直接チェックしているのは「中くらいの地震」

木造住宅の許容応力度計算では、基本的に 中地震(中規模の地震) に対して安全かどうかを確認します。

つまり、

大地震の揺れそのものを直接計算しているわけではない

しかし、部材の強さ・バランス・接合部などを適切に設計することで、大地震に対する性能も間接的に確保する

という考え方です。

■ 地震力は、ざっくり言うと「その階が支える重さの約20%」

中地震時の地震力は、原則として、

その階が支える建物の重さ(重量)の約20%

をベースに考えます。

イメージとしては、

・建物が重い → 揺れたときに大きな力が発生する
・建物が軽い → 発生する力は比較的小さい

ということです。

つまり、地震時の力は「地面から建物を押す力」というより、

建物自身の重さ(質量)が慣性で抵抗して生まれる力

と考えると分かりやすいです。



■では、なぜ20%ぴったりではないの?

実際の計算では、単純に「重さ×20%」ではなく、建物の条件に応じて係数を掛けて調整します。

主な係数は次の3つです。

● 地震地域係数(0.7〜1.0)

これは、地域ごとの地震の起こりやすさを反映する係数です。

・地震が比較的少ない地域 → 小さめ(例:0.7)
・地震が多い地域 → 大きめ(最大1.0)

東京・大阪などは 1.0 とされることが多いです。

<ポイント>

これは「増やす係数」ではなく、地域によって少し下げるための係数(低減係数) と理解するとよいです。

● 振動特性係数

建物の揺れやすさ(固有周期)や、上下階の硬さのバランス、地盤の性質などを考慮する係数です。

一般的な2階建て木造住宅ではほとんど1.0 になることが多いです。

なので、普通の戸建て住宅では、

・1階と2階の耐力壁のバランスが極端に悪い
・特殊な形状で揺れ方に偏りがある

といった場合でなければ、あまり神経質にならなくても大丈夫です。

● 地震層せん断力分布係数(上の階ほど大きくなる)

これは、上の階ほど揺れが大きくなることを反映する係数です。

建物は地震時に、上に行くほど大きく動きやすいので、上層階の地震力は少し割り増しされます。

・2階建ての2階 → だいたい 1.3程度
・3階建ての3階 → だいたい 1.4〜1.5程度

<ポイント>

戸建て住宅では、実務上この「地震層せん断力分布係数」が、地震力を増やす要因として効いてくることが多いです。


■上の階の係数が大きいのになぜ1階の地震力が大きくなりやすいの?

ここが少しややこしいですが、重要です。

・上の階は、係数(Ci)は大きい
・しかし、下の階はその階だけでなく、上の階の重さもまとめて支えるので、支える重量(Wi)が大きい

そのため、最終的な地震力は、最下層(1階)が最も大きくなることが多いです。

つまり、

・上階:揺れやすいので係数は大きい
・下階:支える重さが大きいので、結果として地震力が大きい

という関係です。


■地盤がやわらかい場合はさらに割り増しすることがある

地盤が軟弱な場合は、求めた地震力を 1.5倍 する規定があります。

ただし実務では、いつも機械的に適用されるわけではなく、

・地盤調査結果
・地形条件(谷地形、盛土など)
・周辺状況

を見て、設計者が判断します。

つまり、

地盤が弱いほど揺れやすい
→ 建物にかかる地震の影響も大きく見ておく

という考え方です。


■木造だけ特別ではない(RC造・S造も基本の考え方は同じ)

地震力の求め方の基本は、木造住宅だけの特別ルールではなく、
鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)でも共通する考え方です。

共通する本質は、

・地震力は建物の重さに比例する
・建物の高さや揺れ方、地域性、地盤条件で調整する

ということです。

<まとめ>

・許容応力度計算は、主に中地震に対する検討
・地震力は、ざっくり 「その階が支える重さの約20%」
・実際は係数で調整する(地域・揺れやすさ・階ごとの分布)
・戸建てでは、特に 上階ほど大きくなる分布係数 が効く
・ただし最終的には、1階が支える重量が大きいため1階の地震力が大きくなりやすい
・地盤が軟弱なら、さらに割り増しを検討することがある



次回は、地震力算定について、お話します。

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