NSJ住宅性能研究所

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荷重と外力(木造住宅)シリーズ6

風圧力算定★

■風圧力って何?

風圧力(ふうあつりょく)とは、風が建物を押したり引いたりする力のことです。

木造住宅では、地震だけでなく、この風の力も安全設計でとても重要です。

風圧力は、基本的に次の考え方で求めます。

・風そのものの強さ(速度圧 q)
・建物の形による受けやすさ(風力係数 Cf)
・風を受ける面積

つまり、

「強い風」×「受けやすい形」×「大きい面積」=大きな風圧力

になります。


■風力係数(Cf)とは?

風力係数は、建物の壁や屋根がどれくらい風を受けるかを表す数字です。

これは、次の差で考えます。

・外圧係数(Cpe):外側から受ける風の影響
・内圧係数(Cpi):建物の中から押し返す(または引く)影響

つまり、

Cf = Cpe - Cpi

●ポイント

・建物が閉鎖型(普通の住宅のように外壁・窓で囲われている)
・開放型(大きく開いている倉庫など)

によって、係数が変わります。

また、閉鎖型の住宅では、内圧係数 Cpi は 0 または -0.2 を使うことがありますが、建物全体の水平力としては結果が同じになる場合があるため、実務では簡略化して 0 を使うプログラムもあります。



■屋根は押されるだけじゃない(吸い上げもある)

風は壁を押すだけでなく、屋根では上向きに引っ張る(負圧)ことがあります。

特に勾配屋根では、風向きや屋根の角度によって、

・正圧(押す)
・負圧(吸い上げる)

のどちらにもなります。

さらに、軒先や棟(むね)などでは、建物全体よりも局所的に強い風の影響(局部風圧)が出やすいので、そこは注意が必要です。


■壁量設計と許容応力度計算での違い

●壁量設計(簡易な設計)

屋根も含めた建物全体の投影面積でまとめて扱うことが多い

●許容応力度計算(より詳細な設計)

・原則として、階ごと
・さらに、風力係数が違う部分ごと(壁、屋根など)

に分けて計算します。

ただし住宅は低層なので、実務では安全側に見てまとめて計算するソフトも多いです。


■速度圧(q)とは? 風の強さの本体

速度圧 q は、簡単に言うと、「風速によって生じる圧力」 です。

風速が大きいほど圧力は大きくなり、しかも重要なのは、「風圧は風速の2乗に比例する」ことです。

つまり、

・風速が2倍になると、風圧力は4倍
・風速が3倍になると、風圧力は9倍

になります。

このため、風速の設定を正しく行うことがとても大事です。


■基準風速(Vo)とは?

基準風速 Vo は、地域ごとに決められている、「その地域で想定する基準となる風の強さ」 です。

これは、10分間平均風速の50年再現期待値をもとに設定されます。
(ざっくり言うと、「長い期間で見たときに、ある程度の確率で起こりうる強い風」を基準にしている)

日本地図で地域ごとの基準風速が示されており、地域によって値が違うことが分かります。


■なぜ高さで風が変わるの?

地面に近いほど、建物や木などの影響で風は弱くなり、高い位置ほど風は強くなります。

そのため、本来は高さごとに速度圧 q を細かく変えるのが理想ですが、木造住宅のような低層建物では、実務上は、

・1階
・2階
・屋根付近

など、階ごとに代表高さを決めて安全側に設定する方法がよく使われます。


■地表面粗度区分(地面のまわりの状況)

風の強さは、建物の周囲の環境にも影響されます。

これを表すのが 地表面粗度区分 です。

●たとえば

・海辺、平坦で障害物が少ない場所 → 風が通りやすい
・市街地(建物が多い場所) → 地表付近の風は弱くなりやすい

風速の鉛直分布でも、粗度区分によって高さ方向の風速の増え方が違うことが示されています。

市街地では地表付近の風速が小さくなりやすい、という傾向が読み取れます。


■ガスト影響係数(Gf)とは?

実際の風は、ずっと一定ではなく、瞬間的に強く吹く(突風・ガスト)ことがあります。

この「瞬間的な強まり」を見込むための係数が ガスト影響係数(Gf) です。

・基準風速は「10分間平均風速」
・建物は瞬間的な強い風の影響も受ける

なので、その差を補正するイメージです。

条件によって Gf が変わる例があり、粗度区分Ⅲ・Ⅳ(建物が多い地域)で大きくなる傾向が分かります。


■実務上の大事なポイント(木造住宅)

風圧力が地震力より大きくなる例があります。

これは、たとえば次のような条件で起こりやすいです。

・桁行き(建物の長手方向)が長い
・切妻屋根で、風を受ける見付け面積が大きい
・建物が軽い(木造住宅)

木造住宅は鉄筋コンクリート造などに比べて軽いため、地震力だけでなく、風圧力が設計を支配する(決め手になる) ことがよくあります。

そのため、壁量設計だけでなく、許容応力度計算でしっかり風圧力を評価することが重要です。


<まとめ>

・風圧力は「風の強さ × 建物の受けやすさ × 面積」で決まる
・風速が少し上がるだけでも、風圧力は大きく増える(2乗で効く)
・屋根は「押される」だけでなく「吸い上げられる」こともある
・地域の基準風速、周囲の環境(粗度区分)、突風の影響(Gf)を考える必要がある
・軽い木造住宅では、風圧力が地震力より厳しくなることがある
・そのため、許容応力度計算は重要



次回は、地震力と建物重量について、お話します。

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