NSJ住宅性能研究所

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許容応力度計算(木造住宅)シリーズ11

水平力への特徴・方針

木造の軸組み構法の住宅は、地震や風などの水平力(横から押す力)に対して、主に耐力壁(筋かい・構造用合板など)で抵抗する構造です。

これを一般に耐力壁構造と呼びます。

ここで大事なのは、耐力壁で抵抗するというだけではありません。

木造住宅の設計では、最終的には、

・想定を超える大きな地震が来た
・大きな揺れが何度も繰り返された

といった状況では、耐力壁が壊れて限界に達することをある程度前提にしています。

つまり、極端に言えば、木造住宅は、最後は耐力壁が壊れることで限界が来る構造になりやすいので、設計の基本方針はこうなります。

「壊れるとしたら、耐力壁が先。

 それ以外(接合部・土台・基礎・床など)が先に壊れてしまうと、一気に危険になる。

そのため 耐力壁以外は、耐力壁より先に壊れないように強く作る」

この方針を実現するために、次のような考え方で設計します。



■用語の整理:存在応力って何?

存在応力とは、設計で想定した地震力などが加わったときに、部材や接合部に、実際に発生する(計算上の)力のことです。

例えば、耐力壁を必要量の1.5倍入れている建物は、1枚あたりの壁にかかる力が分散されます。

その場合、1枚の壁にかかるせん断力(横方向の力)は、ざっくり、

必要量ちょうど(1.0倍)のときより小さくなる
(例:1/1.5=約0.67倍くらいになる)

というイメージです。

ところが木造の設計では、実際にそこまで力が来ない(0.67倍程度)としても、耐力壁が、許容耐力いっぱい(1.0倍)まで働いたときを基準にして、周辺の部材を強く設計することが多いです。

これは、

「存在応力ではなく、耐力壁の許容耐力を基準にする」

という意味です。


■重要な設計方針5つ

① 柱頭・柱脚の接合は、耐力壁が最大まで効いたときでも壊れないようにする

耐力壁の両端には柱があり、その柱の上(柱頭)と下(柱脚)の接合部には、引き抜こうとする力が働きます。

ここで重要なのは、

「通常の地震で実際に生じる力(存在応力)」ではなく、
耐力壁が許容耐力いっぱいまで抵抗したときに出る「最大級の引抜力」

を想定して、接合部(ホールダウン金物など)が壊れないようにすることです。

目的:耐力壁より先に接合部が壊れないようにする

② 土台・アンカーボルトも、耐力壁が最大まで効いたときの力でチェックする

耐力壁が強く働くほど、柱脚には引抜力が生じます。すると、

・土台(横材)には曲げが出る
・アンカーボルトには引抜(抜けようとする力)が出る

など、周辺部材にも負担が広がります。

ここも同じで、存在応力だけでなく、

・耐力壁の短期許容せん断力(=最大級に壁が働いた状態)
・柱脚金物の許容引張耐力

などを基準にして、土台やアンカーが先に壊れないよう検定します。

③ 基礎も、耐力壁が最大まで効いたときの力で設計する

耐力壁がしっかり踏ん張ると、基礎には、

・引張
・せん断
・曲げ
・局部的な応力集中

などが生じます。

基礎も、「存在応力で足りてるからOK」ではなく、耐力壁が許容耐力いっぱいまで働いたときに基礎に出る力を想定して、基礎が先に壊れないように設計します。

④ 水平構面(床・屋根の面)は「存在応力」で設計するが、耐力壁より先に壊れないようにする

床や屋根は「面」として建物を固め、地震力を耐力壁へ配る役割があります。これを水平構面と呼びます。

水平構面は、基本的には、存在応力で設計します(現実にその面に来る力を想定する)

ただし役割上、

・耐力壁に力を伝える
・耐力壁より先に壊れたらダメ

なので、壊れ方の順番(弱い順)としては、

「耐力壁が先、水平構面は後」

になるように計画します。

⑤ 横架材の接合部も、水平構面より先に壊れないようにする

横架材(梁など)と柱の接合部が先に壊れると、水平構面で集めた力を耐力壁へ流せなくなります。

そのため、

・水平構面に生じる引抜力(存在応力で計算)
・それに耐えられる接合仕様

を確保し、水平構面より先に接合部が壊れないようにします。


<まとめ:木造住宅の許容応力度計算の特徴>

他の構造(鉄骨・RCなど)では、

「存在応力に対して、許容応力度以下か?」

を基本として設計するのが一般的です。

一方、木造の軸組み住宅では、特に鉛直構面まわり(柱・接合・土台・基礎など)で、

「耐力壁が、許容耐力いっぱいまで働いた前提で、周辺がそれより先に壊れないようにする」

という考え方が強く出ます。

つまり、

・耐力壁(想定する壊れ役)
・それ以外(先に壊れてはいけない)

という「壊れ方の順番」を設計で作ります。

これが、木造軸組み構法住宅の許容応力度設計の大きな特徴です。



次回は、検定の単位区分について、お話します。

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